病より起き懷を書す(病起書懷)

書き下し文

病骨、支離として、紗帽、寬く、

孤臣、萬里、江干に客す。

位、卑しけれど、未だ敢て、憂國を忘れず、

事、定まれど、猶お須らく、棺を、闔するを待つべし。

天地の神靈は、廟社を扶け、

京華の父老は、和鑾を望む。

出師の一表、今古に通じ、

夜半、燈を挑て、更に、細く看まん。

訓読文

病(やまい)ヨリ起(お)キ書(しょ)ス[レ]懷(かい)ヲ

陸(りく)游(ゆう)

病(びょう)骨(こつ)支(し)離(り)トシテ紗(さ)帽(ぼう)寬(ひろ)ク,

孤(こ)臣(しん)萬(ばん)里(り)客(かく)ス[二]江(こう)干(かん)[一]ニ。

位(くらい)卑(いや)シケレド未(いま)ダ敢(あえ)テ忘(わす)レズ[二]憂(ゆう)国(こく)[一]ヲ,

事(こと)定(さだ)マレド猶(な)ホ須(すべか)ラク待(ま)ツベシ[レ]闔(ふた)スルヲ[レ]棺(かん)ヲ[レ]。

天(てん)地(ち)ノ神(しん)霊(れい)ハ扶(たす)ケ[二]廟(びょう)社(しゃ)ヲ[一],

京(けい)華(か)ノ父(ふ)老(ろう)ハ望(のぞ)ム[二]和(か)鑾(らん)ヲ[一]。

出(すい)師(し)ノ一(いっ)表(ぴょう)通(つう)ジ[二]今(こん)古(こ)ニ[一],

夜(や)半(はん)挑(かきたて)テ[レ]燈(とう)ヲ更(さら)ニ細(こまか)ク看(み)マン。

典籍

劍南詩鈔

参考資料