清平調詞

書き下し文

その一

雲には衣裳を想い、花には容を想う。

春風、檻を払って、露華、濃やかなり。

若し、群玉山頭に見るに非ずんば、

会ず 瑶台月下において逢わん。


その二

一枝の紅艶1、露、香を凝らす。

雲雨巫山、枉しく断腸。

借問す、漢宮、誰か似るを得たる。

可憐の飛燕、新粧に倚る。


その三

名花傾国、両つながら相歓ぶ。

2に、君王の笑みを帯びて、看るを得たり、

解釈す、春風、無限の恨み、

沈香亭北、欄干に倚る。

訓読文

清(せい)平(へい)調(ちょう)詞(し) 其(そ)ノ一(いち)

李(り)白(はく)

雲(くも)ニハ想(おも)[二]ヒ衣(い)裳(しょう)[一]ヲ花(はな)ニハ想(おも)フ[レ]容(かたち)ヲ,

春(しゅん)風(ぷう)拂(はら)ツテ[レ]檻(かん)ヲ露(ろ)華(か)濃(こま)ヤカナリ。

若(も)シ非(あら)[二]ズンバ群(ぐん)玉(ぎょく)山(さん)頭(とう)ニ見(み)ルニ[一],

會(かなら)ず向(おい)て[二]瑤(よう)臺(だい)月(げっ)下(か)ニ[一]逢(あ)ワン。


清(せい)平(へい)調(ちょう)詞(し) 其(そ)ノ二(に)

李(り)白(はく)

一(いっ)枝(し)の紅(こう)艷(えん)露(つゆ)凝(こ)ラス[レ]香(かお)リヲ,

雲(うん)雨(う)巫(う)山(ざん)枉(むな)シク斷(だん)腸(ちょう)。

借(しゃ)問(もん)ス漢(かん)宮(きゅう)誰(だれ)カ得(え)タル[レ]似(に)ルヲ,

可(か)憐(れん)の飛(ひ)燕(えん)倚(よ)ル[二]新(しん)粧(そう)ニ[一]。


清(せい)平(へい)調(ちょう)詞(し) 其(そ)ノ三(さん)

李(り)白(はく)

名(めい)花(か)傾(けい)國(こく)兩(ふた)ツナガラ相(あい)歡(よろこ)ブ,

長(つね)ニ得(え)タリ[二]君(くん)王(おう)ノ帶(お)ビテ[レ]笑(え)ミヲ看(み)ルヲ[一]。

解(かい)釋(しゃく)ス春(しゅん)風(ぷう)無(む)限(げん)の恨(うら)み,

沈(ちん)香(こう)亭(てい)北(ほく)倚(よ)ル闌(らん)干(かん)ニ。

典籍

李太白文集 (清)王琦琢輯註

参考資料

  • 清平調詞三首 其一(李白) kanbun.info
  • 清平調詞三首 其二(李白) kanbun.info
  • 清平調詞三首 其三(李白) kanbun.info
  • 李太白文集 (清)王琦琢輯註(中国語) ctext.org

  1. 「濃艶」ともする。 ↩︎

  2. 「長」は「常」に同じ。 ↩︎