古跡を詠懷す(其の三)

書き下し文

群山、萬壑、荊門に赴く、

明妃、生長し、尚お、村、有り。

一たび、紫臺を去れば、朔漠に連り、

獨り青冢を留めて、黄昏に向かう。

畫圖、省識さる、春風の面を、

環珮、空しく歸る、月夜1の魂。

千載、琵琶、胡語を作し、

分明に、怨恨を曲中に論ず。

訓読文

詠(えい)[二]懷(かい)ス[三]古(こ)跡(せき)[一]ヲ

杜(と)甫(ほ)

羣(ぐん)山(ざん)萬(ばん)壑(がく)赴(おもむ)ク[二]荊(けい)門(もん)ニ[一],

生(せい)[二]長(ちょう)シ[三]明(めい)妃(ひ)[一]尚(なお)有(あ)リ[レ]村(むら)。

一(いっ)タビ去(さ)レバ[二]紫(し)臺(だい)ヲ[一]連(つが)リ[二]朔(さく)漠(ばく)ニ[一],

獨(ひと)リ留(とど)メテ[二]青(せい)塚(ちょう)ヲ[一]向(む)カフ[二]黄(こう)昏(こん)ニ[一]。

畫(が)圖(ず)省(しょう)識(しき)サル春(しゅん)風(ぷう)ノ面(おもて)ヲ,

環(かん)珮(ぱい)空(むな)シク歸(かえ)ル月(げつ)夜(や)ノ魂(こん)。

千(せん)載(ざい)琵(び)琶(ば)作(な)シ[二]胡(こ)語(ご)ヲ[一],

分(ぶん)明(めい)ニ怨(えん)恨(こん)ヲ曲(きょく)中(ちゅう)ニ論(ろん)ズ。

典籍

杜工部诗集注解 (明)张溍 (淸)张榕端


杜工部詩集 - (明)朱鶴齡

参考資料


  1. 「夜月」ともする。 ↩︎