書き下し文
錦瑟、端無くも、五十弦
一弦一柱、華年を思う
荘生、暁夢に蝴蝶と迷う
望帝、春心を杜鵑に托す
滄海の月明らかにして、珠に涙有り
藍田の日暖かにして、玉は烟を生ず
この情、追憶と成るを待つべきか
只だ、是れ、当時のこと、已に惘然
訓読文
錦(きん)瑟(しつ)
李(り)商(しょう)隠(いん)
錦(きん)瑟(しつ)無(な)クモ[レ]端(はし)五(ご)十(じゅう)絃(げん),
一(いち)絃(げん)一(いっ)柱(ちゅう)思(おも)フ[二]華(か)年(ねん)ヲ[一]。
莊(そう)生(せい)曉(げう)夢(む)に迷(まよ)フ[二]蝴(こ)蝶(ちょう)ト[一],
望(ぼう)帝(てい)春(しゅん)心(しん)ヲ托(たく)ス[二]杜(と)鵑(けん)ニ[一]。
滄(そう)海(かい)月(つき)明(あき)ラカニシテ珠(たま)ニ有(あ)リ[レ]涙(なみだ),
藍(らん)田(でん)日(ひ)暖(あたた)カニシテ玉(たま)ハ生(しょう)ズ[レ]烟(けむり)ヲ。
此(こ)ノ情(じょう)可(べ)キカ[四]待(ま)ツ[三]成(な)ルヲ[二]追(つい)憶(おく)ト[一],
只(た)ダ是(こ)レ當(とう)時(じ)ノコト已(すで)ニ惘(ぼう)然(ぜん)。