月夜に舍弟を憶う

書き下し文

戍鼓、人行、斷え

秋邊1、一雁の聲

露は今夜より白く

月は是れ故郷の明かり

弟有れど、皆、分散2

家の死生を問ふ無し

書を寄せど長く達せず3

況んや乃ち、未だ、兵を休めざるをや

訓読文

月(げつ)夜(や)に憶(おも)フ[二]舍(しゃ)弟(てい)[一]ヲ

杜(と)甫(ほ)

戍(じゅ)鼓(こ)斷(た)エ[二]人(ひと)ノ行(こう)[一],

秋(しゅう)邊(へん)ニ一(いち)雁(がん)ノ聲(こえ)。

露(つゆ)ハ從(より)[二]今(こん)夜(や)[一]白(しろ)ク,

月(つき)ハ是(こ)レ故(こ)郷(きょう)ノ明(あ)カリ。

有(あ)レド[レ]弟(おとうと)皆(みな)分(ぶん)散(さん)シ,

無(な)シ[三]家(いえ)ノ問(と)フ[二]死(し)生(しょう)ヲ[一]。

寄(よ)セド[レ]書(しょ)ヲ長(なが)ク不(ず)[レ]達(たっ)セ,

況(いわ)ンヤ乃(すなわ)チ未(いま)ダ休(やす)[レ]メザルヲヤ兵(へい)ヲ。

典籍

御定全唐詩 (《摛藻堂四庫全書薈要》本)

参考資料


  1. 「邊秋」ともする。 ↩︎

  2. 「羈旅」ともする。 ↩︎

  3. 「避」ともする。 ↩︎