雁門太守行

書き下し文

黒雲、城を圧して、城、摧けんと欲し、

甲光、月1に向かいて、金鱗、開く。

角声、天に満つ秋色の裏、

塞上2の燕脂、夜、紫を凝らす

半ば巻ける紅旗、易水に臨み

霜は重く、鼓は寒くして、声、起こらず3

君の黄金台上の意に報いて、

玉龍を提携して、君が為に死せん

訓読文

雁(がん)門(もん)太(たい)守(しゅ)行(こう)

李(り)賀(りが)

黑(こく)雲(うん)壓(あっ)シテ[レ]城(しろ)ヲ城(しろ)欲(ほっ)シ[レ]摧(くだ)ケント,

甲(こう)光(こう)向(む)カヒ[レ]月(つき)ニ金(きん)鱗(りん)開(ひら)ク。

角(かく)聲(せい)滿(み)ツ[レ]天(てん)ニ秋(しゅう)色(しょく)ノ裏(うち),

塞(さい)上(じょう)燕(えん)脂(じ)凝(こ)ラス[二]夜(よる)紫(し)ヲ[一]。

半(なか)バ卷(ま)ケル[レ]紅(こう)旗(き)臨(のぞ)ミ[二]易(えき)水(すい)[一]ニ,

霜(しも)ハ重(おも)ク鼓(こ)ハ寒(さむ)クシテ聲(こえ)不(ず)[レ]起(お)コラ。

報(むく)ヒテ[二]君(きみ)ノ黄(おう)金(ごん)臺(だい)上(じょう)ノ意(い)[一]ニ,

提(てい)[二]携(けい)[三]シテ玉(ぎょく)龍(りょう)ヲ[一]爲(ため)ニ[レ]君(きみ)ガ死(し)セン。

典籍

御定全唐詩 (《摛藻堂四庫全書薈要》本)

参考資料


  1. 「日」ともする。 ↩︎

  2. 「塞土」ともする。 ↩︎

  3. 「鼓の声が寒くして」ともする。 ↩︎